(ドラマ)つまらない住宅地のすべての家

NHKで1話15分の全24話。月曜日から木曜日まで6週にわたって放送されたドラマ。原作の小説のドラマ化。

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主な家庭は9つ。
丸川家は、自治会長の明(井ノ原)、家出した妻(須藤理沙)、そして息子の亮太(岸蒼汰・ジャニーズ)。
山崎家は50代の夏川結衣の一人暮らし。未婚。母の介護のため、大手企業を辞めてきたが、その母もすでに他界。現在はスーパーでパートをしている。
笠原家は70代の中田喜子が旦那を亡くして一人暮らし。
松山家も50代の尾美としのりの一人暮らし。未婚。山崎が働くスーパーで警備員をしている。密かに山崎に好意をよせている。
三橋家は、夫、妻(京野ことみ)、中学1年の息子の3人暮らし。息子は引きこもり。放浪癖があり、時々どこかへフラっと出かけてしまう。
真下家は、婚約を解消した30代ぐらいの息子(浜野謙太)と母の二人暮らし。
長谷川家は、高校生の娘とその父母、そして祖母(吉行和子)。祖父母が築き上げた長谷川建設の社長を父がしている。みんな祖母には頭が上がらない。
矢島家は、小学4年の長女、2年の次女、祖父、そして母親の4人暮らしだが、看護師の母親はいつも恋人とデートで家を空けている。長女が洗濯や食事の用意など家事をしている。
大柳家はこれまたサラリーマンを退職した引きこもりの息子一人暮らし(稲葉友)。

物語は、ある刑務所から女性が脱走したところから始まる。そして、その逃亡犯が、みんなの住む町の出身ということから、「ここに来るのではないか?」と、丸川明が言い出す。自治会長の明は、近所の家々に「逃亡犯が町に来ないか、毎日見張りをしよう」と声をかけ、笠原家の2階から交代で見張りをするようになった。その見張りをしていく中で、あまり交流のなかったご近所同士が少しづつ近づいていく。

物語が進んでいくうちに、丸川家息子の友達(野嶋恵一)と逃亡犯が従妹同士、そしてその野嶋恵一と、三橋家の息子はオンラインゲーム仲間だったことが判明。真下家の息子と逃亡犯は同級生ということも判明していく。

また逃亡犯と長谷川家には因縁があった。逃亡犯の実家は小さな工務店だったが、大きな仕事を長谷川工務店に横取りされてしまった。原因は入札額が長谷川工務店は漏れたこと。なぜ漏れたか?逃亡犯の父親と長谷川工務店の祖母が不倫関係にあり、父親が祖母に教えてしまったんだとか。逃亡犯は、それを入院して命間もない父親から直接聞くために逃亡した。

すべての家の人たちと逃亡犯が出会い、そのことを知り、最後に逃亡犯は出頭する。その直前に、逃亡犯は丸川に手紙を渡す。その手紙は、逃亡の手助けをしてくれた刑務所の同じ囚人(青木さやか)が、自分の娘にあてたもの。囚人仲間は娘に何度も手紙を書いているが、受け取り拒否で娘には届いていなかったらしい。娘さんに直接会って、無事にその手紙を渡すことができた。

三橋家の夫婦は、息子を裏の倉庫に閉じ込めようとしたが、結局できず。でも最後は、丸川息子、野嶋恵一と直接会うことができ、心を開いて普通の生活ができるようになった。大柳も今回の件で、また就職しようという気持ちになった。矢島家の母親は、結局恋人と別れて、また家に戻ってきて、娘たちと一緒に暮すことに決めた。そしてまたいつもの日常が戻ってきた。

今回のドラマは1回15分なので、とても見やすかった。最初は「よくわからないし、面白そうじゃないな」と思ったけど、15分だから、と見ているうちにハマってしまった。この物語が何を伝えたいのか、というのがいまいち読み取れず、単なるドタバタ劇、という感じもするけど、何故か「続き」が気になって仕方がない・・・そんなドラマだった。

主人公の井ノ原快彦の演技を初めて見たが、セリフの言い回しとか、ちょっと不自然だな、と思いつつ、でも役柄としてはアリなのかな、と思った。夏川結衣、吉行和子と京野ことみを久しぶりに見たが、ちょっと昔に見ていたイメージと変わったな、という印象。

尾美としのりは、白髪が増えたがまだまだ若い感じがした。昔のイメージ通りの演技だった。個人的に注目すべきは稲葉友で、この俳優さんは「しずかちゃんとパパ」では、ヤンキー風の役柄だったが、それとは180度違う、内に籠ったちょっと陰気な役柄で、全くの別人だと思った。どこかで「同じ俳優」と認識できるかな、と思ったが、結局、違う役者さん?というまま、終わってしまった。

また次回、NHKの15分ドラマがあったら見てみたい、と思う。

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「未来」 湊かなえ

次にどんな本を読もうか、と思ってネットで調べたら、なかなか面白い、というコメントを見つけたので、読んでみることに。が!読み終わった後に、これほど嫌な感じのする本だとは思わなかった。でも、湊かなえさん本人の「あとがき」を読んで、その理由がなんとなくわかった。

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物語は6章に分かれている。「序章」「章子」「エピソード1」「エピソード2」「エピソード3」そして「終章」という構成。

「章子」の章では、章子という中学3年生が、10歳の時に受け取った、30歳の自分からの手紙を見つめながら、人気テーマパークへ行く夜行バスに乗っている場面から始まる。章子は、父親・良太を癌で亡くした、母子家庭で生活しているが、母親・文乃は精神的に不安定なため、章子自身が家事をしている。その主人公の一人である「章子」の視線で物語が描かれている。

「エピソード1」では、章子の同級生の亜里沙の視線。亜里沙は低学年で母親を亡くし、父親の須山と弟の健斗と3人暮らし。父親からの虐待で二人とも苦しめられていた。亜里沙も30歳の自分から手紙を受け取った一人。

「エピソード2」では、章子と亜里沙の4年生の時の担任の篠宮真唯子の視線。篠宮も両親が離婚、母親は自分を祖母の家に置いて出て行った。以来、祖母に大切に育てられた。しかし、祖母が亡くなると、母親が急に帰ってきて、祖母の遺産を奪い取ってしまった。大学在学中だった篠宮は、一度きりのアルバイトで騙されて、いかがわしいビデオに出てしまう。しかし、その直後に祖母が遺書を残していたことが判明。しかし時すでに遅し。章子と亜里沙の担任をしているときに、そのビデオがことが保護者に発覚し、教師を退職することになる。それでも、章子と亜里沙のことが気になり、二人だけに30歳の自分からの手紙を書くことにした。

「エピソード3」では、章子の父親の良太の視線。どのようにして、妻の文乃と出会うことになったか、が描かれている。文乃と兄の誠一郎は、早くに母親を病気で亡くしてしまう。父親は県会議員。実は、父親が文乃と性行為をしていることを知ってしまった母親が心労で命を落としたこと、誠一郎が父親と文乃の行為を見てしまった時に「お前もやるか」と言われてショックだったこと。そして実際にはできなかったこと。誠一郎は良太に洗いざらい告白した。そして、父親を殺害することを計画し、良太には家に火を放ってもらうことにした。しかし実際は、良太は父親と一緒に自殺してしまった。良太が火を放った時に、文乃に見つかり、すぐに逃げるように言われる。その後、文乃は警察に出頭し、父親と兄に虐待を受けていたこと、そのために殺害したことを証言し、成人するまで少年院に入れられていた。

「終章」では、「章子」と「エピソード1」の続きが描かれている。章子は、母親と交際していた男性・早坂の殺害を、亜里沙は健斗を自殺に追いやった父親・須山の殺害を計画。二人とも実行し、それから逃れて、最後の思い出に、とドリームランドへ向かった。しかし、ドリームランドの入口で思いとどまり、自首すると決めたところで物語は終わった。

詳しいネタバレあらすじは、下記サイトを参照。
https://hyakuhon.com/novel/mirai/

とにかく、今回の小説は虐待だの、いかがわしいアルバイトだの、ちょっとグロテスクなストーリー展開があり、そこを読んでいるだけで、嫌な気分になった。個人的なそういう表現とかストーリーはあまり好きではないし、今まで読んできた小説もそういうのは少なかったはず。

しかし、作者の湊かなえさん本人が書いた「あとがき」を読んで、「これは読むべき小説だったのかな」とも思った。小学生の7人に1人が貧困の状態にある。40人のクラスだと5~6人が貧困ということになる。そして作者曰く、レアケースばかりを集めて小説にした訳ではなく、今の日本のどこにでもある状況だ、とのこと。そういう状況を読者に理解して欲しかった、という。

自分のことを考えれば、両親は健在で大学まで出してくれたし、虐待などもなかったし、周りの友達にもそういう人が多かった。親が離婚した、なんていう話は少なくとも自分の友達にはいなかった。今から1980年代だから?なのかもしれないけど。でもきっと、今は日本の経済も落ち込んだままバブル崩壊から30年以上経ち、普通に生活できている人はきっと少ないのかもしれない。そして、経済的に苦しいと、夫婦間のいざこざは多くなるだろうし、それが子供にも飛び火して、この物語に出てくるような状況になるのかな、と思う。

読んだ直後は、本当に嫌な気分になったが、あとがきを読んで、ちょっと考えさせられた作品だった。

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