高杉良「転職」

久しぶりの読書。約4か月ぶり。3か月前に出たばかりの高杉良「転職」を読んだ。

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主人公の小野健一は、大学では体育会系の大柄な男。ガッツと誠実さで転職を繰り返しながら、出世していくストーリー。

最初は「アクセンチュア」というコンサルティング会社でプログラミングを習得する。それまでプログラミング経験など皆無。さらに外資系であるが故に、アメリカでの研修もあり、と多難な毎日を過ごすが、持前の忍耐強さと努力で、プロジェクトを成功へと導いた。

その後、生活雑貨の外資系「P&G」、ジーンズの老舗「リーバイス」、ビールの大手「モリソン・クアーズ」、そして外資系ベンチャーのコーヒーショップ「ブルーボトルコーヒー」と、進んでいく。

アクセンチュアで「社長になる」という夢を抱いた小野。各企業で「マーケティング」「ブランディング」「交渉術」などを学んでいく。

全体的に、全然失敗談がなく順調に進んでいくところに多少の違和感があった。例えば、プロジェクトで失敗して、多額の損失を出したとかはない。上司と意見が合わずに、それまで任されていた重要な役割から降ろされた、などは何度かあり、そういう時に転職していく、という感じ。

ただ、僕自身も転職を何度かしているので、他の人がどういう時に転職を決断するのか、というのはとても参考になった。また、どういう気持で仕事と向き合うか、などはとても参考になった。

前半は「小説」として読んでいたが、後半のクアーズやブルーボトルコーヒーの辺りから、「あれ?これはもしかして実話?」という雰囲気が出てきて、前半以上に読むスピードが早くなった。

そして、あとがきを読んでビックリ。このお話は作者の高杉良さんの娘婿さんの実話とのこと。それを聞くと、「そんなにうまく行くかな?」と思える展開も「そういうことがあってもいいのかも」と思えるようになった。

さらに作者の高杉良さん。僕はこの方について全く存じ上げておらず、他の小説も知らない。ただ今回本屋に行って、「おもしろそうだな」と手に取ったのがこの小説だった、というだけ。でも御年84歳。80冊以上も出している経済小説の巨匠という。視力も弱くなり、午前中だけ仕事をしているらしい。

また今回の小説は、コロナ禍の影響もあり健一氏(実名らしい)と会って取材をすることができなくなった。その代わりに孫の健友氏(こちらも実名らしい)が健一氏の取材をした、とのこと。もらった文体が自分の小説に似ていて驚いた、ともコメントしていた。そこまでしても小説を書き上げる作者の気持ちは自分も見習いたい。

読み終わって、僕としてはとてもすっきりとした終わり方だった。でも、仕事でうまく行ってない人が読んだら、もしかしたら嫌味にしか思えない物語かもしれない。そういう意味では、ちょっと好き嫌いの分かれる小説かも。いや、高杉氏の経済小説ファンは、きっと仕事もバリバリできる方々だろうから、こういう物語もきっと楽しく読めるに違いない。そして次回、自分が転職するときに、もう1回読んでみようかな、と思う。
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