森崎緩「小料理屋の幡上君のお弁当 皆さま召し上がれ」

森崎緩のお弁当シリーズの第3弾を読んだ。

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ちなみに第一弾、第2弾はそれぞれ、
「総務課の幡上君のお弁当 ひとくちもらえますか?」
「総務課の渋澤君のお弁当 ひとくち召し上がれ」
だった。

今回は、第一弾の最後で結婚した主人公、幡上君と、同じ総務課で「メシ友」として一緒にお弁当を食べていた清水真琴が結婚したところから始まる。幡上君は函館の実家の小料理屋に入り、父親から色々と教わる日々。そして真琴さんは女将見習いとしてお店に出ることになった。

父親からランチタイムのお弁当作りを任されて、真琴さんと一緒になって新しいお弁当を考える日々。函館の旬の魚や野菜を使って、他のお弁当とは差別化を図りながら、新作のお弁当を考えていく。恵庭市(千歳の近く)出身の真琴さんのアイディアが、幡上君のお弁当作りに大いに役立った。

越冬野菜の肉巻き弁当は、近所の幼馴染の佐津紀さんの幼稚園児の息子の健斗くんに大好評。
変わりイカ飯弁当は、評判になって地元のタウン誌に掲載された。マグロカツと2種類のソース弁当は、函館にドラマのロケに来た人気俳優に気に入ってもらえて、彼のインタビューに載ってからは日本各地からそのお弁当を求めに来る人達が訪問してくれた。しかしマグロの季節が終わってしまい、人気俳優と同じお弁当を食べたかったお客さんが出てきた。そんなお客さんのために、新しく考え出されたタラザンギとホタテご飯弁当はなかなか好評だった。

ある日、お弁当を買いに来た佐津紀さんと健斗君。お昼1時を過ぎていたので残念ながらお弁当は売り切れ。そこで真琴さんが「一緒にお弁当を作ろう」と、幡上君が残った食材で色々と作ってくれた料理を詰めていくことに。無事に完成したお弁当を見て大喜び。

エピローグでは、東京で結婚した元同僚の渋澤くんと奥さんの一海さんが函館に遊びに来てくれた。幡上君、真琴さん、渋澤君、一海さんといえばお弁当。ということで、お店でお弁当をみんなで食べることに。和気藹々としたお昼ご飯の時間が過ぎて、物語は終了。

今回は新婚夫婦の物語、ということで、ちょっと照れくさい感じもする描写が多かったが、自分も結婚した当初はこんな感じだったなぁ、とちょっと懐かしくなった。前回も書いたかもしれないけど、こういう物語を読んで若い人たちが少しでも「あ、結婚っていいかも」と思ってくれたらいいな、とまず思った。

物語は全2作同様、のんびりのんびりと進んでいく。料理の描写も多く、それがなかなか興味深い。料理人の人たちがどういうことを考えて料理をしていくのか。一工夫することで料理がよりおいしくなったり、揚げ物が綺麗に揚がったりするんだな、ということがわかった。

この物語がいいのは、全編を通じて主人公たちの日々の生活が、決して特別なものではなく、かなりあり得る状況だ、ということ。今回でいえば、マグロカツの場面。「人気俳優が食べれくれたのなら、感想を聞きたいな」という幡上くんの台詞に、「もしかしたら、撮影が終わった人気俳優が、突然「小料理屋・はたがみ」を訪問してくれて、直接お礼とか感想とかを言ってくれるんじゃないか?と予想した。

しかし、実際には雑誌のインタビューで「マグロカツはおいしかった」という感想を述べただけ。テレビドラマとかだと、多分お店に訪問してくれるだろうな。もしこの物語がドラマ化されたら絶対にそうなるんじゃないか?とか思ってしまう。

でも雑誌のインタビュー止まりにしているところが、まぁあり得る最大限の状況だと思う。そういう突拍子もないストーリー展開をしないところが、この物語を読んでいて安心するところ。

健斗君というかわいい登場人物が出てきたり、幡上君も「自分もいつか子供ができて父親になるんだろうか」みたいな話が出てきたから、いつか父親になった幡上君が、子供の幼稚園に持っていくお弁当の物語とかが出てくるかなぁ、と期待している。

でも第4弾は全く違う「函館グルメ開発課の草壁君~」。でもレビューを見ていると、幡上君たちも出て来るらしいので、こちらも楽しみ。

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