森崎緩「総務課の幡上君のお弁当、ひとくちもらえますか?」

本屋に行って、何か面白い小説はないかな?と思って見つけた本。厚さもちょうどいいし、表紙のイラストも楽しそうな印象を受けたので読んでみることに。

hatagami.jpg

主人公、幡上君が会社の同期の清水さんとお弁当を一緒に食べる仲になってから、最後は結婚するまでの恋愛物語。恋愛モノってあまり自分の趣味ではないけど、今回はとても読みやすくてほのぼのできた。

幡上君の実家は函館で小料理屋を営んでいる。そのせいか、小さい頃から料理が好きで特異な幡上君。大学進学のため札幌で一人暮らしを始める。そしてそのまま会社に就職し、総務課に配属された。

料理好きの幡上君は、毎日お弁当を持参。同期と外のレストランにランチに行くこともなく、一人で社員食堂で食べていたら、清水さんに声をかけられた。

清水さんも一人暮らし。自分でお弁当を作ってくるが、幡上君のレベルにはほど遠いらしい。そこから二人の交流が始まるが、周りの「付き合ってるの?」という期待とは裏腹に、二人とも「メシ友」として、友人関係を維持していた。

2年目もそのままの関係を維持。3年目になり幡上君が恋心を抱いて片思いが始まるが、告白することもなく4年目。5年目になって「もっと他の人にも自分の料理を食べてほしい」と思い、退職。それと同時に清水さんに告白。実家の小料理屋を継ぐために、父親の元で修行を始める。

6年目、清水さんが函館に遊びに来てくれた。二人とも遠距離恋愛を続行中。毎日メッセージをし合い、週末は電話ばかり。清水さんは幡上君の実家に挨拶に行き、6年目の年度末、3月に退職し函館に引っ越し。幡上君と籍を入れて新婚生活が始まった。

物語は1年目から6年目までの6章でまとめられているが、各章でどんな話だったか、読み終わっても細かく覚えていない。なんていうか、それだけ平々凡々と物語が進んでいく。ミステリーなどのように、状況の急展開や殺人が起きるわけでもなく、幡上君と清水さんの社員食堂での話が進んでいくだけ。

個人的には、3年目で恋心を頂いたのならダメもとでガンガン行けばいいのに・・・と思いつつ、本当に大切な相手なら失敗はしたくないし、今の関係が終わってしまうのは何としても避けたい、と同情の余地もある。

でもでも、せめて1年もあるんだから夕食を一緒に食べに行ったり、デートしたりはしても良いような・・・。いや、それを言ったら、このとっても純愛すぎるストーリーが成り立たないのだろう。

物語にはもう二人、幡上君と清水さんに影響を与える、素敵な登場人物がいる。一人は幡上君の上司の藤田さん。女性の先輩で新入社員の幡上君を指導してくれた。もう一人は、幡上君の同期の渋澤くん。

藤田さんは、ずーっと幡上君と清水さんの関係に疑問を持っていたが、実は自分と大学時代の友達の関係を見ているようでイラついていたらしい。藤田さんの男友達も、なかなか着かず離れずの関係だったが、最後はしびれを切らした藤田さんが逆プロポーズ。藤田さんは幡上君4年目で退職していった。

渋澤君は、同期でも仕事ができて、イケメンのモテ男。彼も幡上君と清水さんの関係を大いに疑っていた。渋澤君が3年目で東京本社に転勤になったとき、とても敗北感を味わった幡上君だったが、清水さんと話をしていくうちに心が落ち着き、最後は快く東京に送り出せた。

二人の存在も、幡上君の清水さんへの想いを自覚させることに貢献している。異性との友人関係は存在するのか?「しない」という藤田さん、いつも疑っている渋澤君。多分、これはずっと解決しない問題なのかな、と思う。

作者の森崎さんは、この続編とでも言うべき、「総務課の渋澤君のお弁当、ひとくち召し上がれ」を出している。

4年目で東京へ転勤になった渋澤君が、年下の同僚との関係を描いているらしい。こちらも純愛ストーリーみたいで、ちょっと興味がある。今度読んでみたいと思う。

また「小料理屋の播上君のお弁当 皆さま召し上がれ」という、続編もあるらしい!これは絶対に読みたい(笑)

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。