「八日目の蝉」角田光代

久しぶりの読書。前回の池井戸潤さんの本を読んでから、ちょっと間を置きたかった、のと、次に何を読むかでちょっと悩んでいたら時間が過ぎてしまった。

今回は角田光代さん著作の「八日目の蝉」。

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ある冬の日、生後6か月ぐらいの女の子の赤ちゃんが誘拐された。誘拐をしたのは、赤ちゃんの父親と不倫関係にあった女性・希和子。母親が父親を朝、駅に送っていくときのちょっとした隙の出来事だった。

希和子はまず大学時代の唯一の友人の家に行く。希和子自身、赤ちゃんの世話などをしたことがなかったので、子供のいる友人に助けを求めた。7日間ほど滞在し、その後名古屋へ逃げる。

名古屋で路頭に迷っていると、見知らぬ老婆が、自分の家に泊ってもいい、という。その老婆は開発地域で取り壊し寸前の地域に住んでいた。老婆の自宅もすでに売却済みなのだが、老婆は抵抗していた。立ち退き検査が入る、と知った希和子はまた逃走する。

次に向かったのは、エンジェルホームというカルト的な集団の家。全員女性が住む家には、財産の全てを渡して入居が許可された。そこに2年半ほど滞在する。赤ちゃんが4歳になるころに、当局の捜査が入りそうになり、身の危険を感じた希和子はまたもや逃走。そこで知り合った久美から、その人の実家を教えてもらったので、とりあえずそこに行ってみることに。

小豆島のその実家に、久美が元気であることを伝えると、その近所のラブホテルで住み込みの掃除の仕事をすることに。しかし久美の母親が心配して、自身が経営する素麺屋で働かせてくれることになった。

その素麺屋で働きながら、幸せな日々を過ごしていると、参加したお祭りで見知らぬ人に写真を撮られていて、それが写真コンテストで入賞。全国紙に掲載され、最後は警察につかまってしまった。

そこまでが第1部で、第2部では誘拐された赤ちゃん、本名は秋山恵理菜、が現在の生活をしながら、当時のことを思い出していく。恵理那は現在大学生で週5日で居酒屋のアルバイトをしている。ある日、恵理那に安藤千草という女性が訪ねてくる。

千草と恵理那はエンジェルホームで数年間、一緒に暮らしていたことがあり、千草は当時の誘拐事件やエンジェルホームについての本を何冊か書いている。恵理那を取材しながら、自分の当時のことも思い出したり、自身の人格形成でゆがんでしまった原因を探ったり、また何かに囚われて生きづらくなっている自分自身を解放したい、と思っている。

その回想の中で、希和子と恵理那の父・丈博がどうして不倫に走ったか?事件の後はどうしたか?何故希和子が誘拐事件を起こしたのか?エンジェルホームとは何だったのか?などなどが明かされていく。

そんな中、恵理那も結婚している男性と不倫関係になり、妊娠してしまう。恵理那は男性にその事実を告げることなく、逆に別れを告げる。何故、希和子と同じ運命を辿ってしまったのか?千草に「もう一度、自分が誘拐された道のりを辿ってみないか?」と言われ、エンジェルホームを訪ね、そしてクライマックスは小豆島へ向かうフェリー乗り場にたどり着く。

実はそこには、懲役12年の刑期を終え、各地を点々としながらここにたどり着いた希和子がいた。希和子は時間があればこのフェリー乗り場に来る。本当は小豆島に行きたいが、勇気が出ずナカナカ行けない。今は時間を見てはここに来て、小豆島に渡る人たちを眺めている。

恵理那を見かけた希和子は、当然恵理那とはわからない。もしかしたら、と思うがそんな人は今までに何人もいた。そんな感じで物語は終わっていった。

さてさて、僕の感想です。第一部ではおいしいところを隠しながら、希和子の目線でどんどん話が進んでいきます。この後、どうするんだろう?逃げ切れるのか?それとも子供と二人で心中するのか?子供は母子手帳もないし、戸籍謄本も取れない。学校には当然行けない。どうするんだろう?とワクワクして読み進めていった。

希和子が逮捕されて第1部が終了し、ホッとしたのと同時に、第2部はどうなるのか、これまたワクワク。第2部を読みながら、何故、希和子が不倫をしたのか?何故、恵理那を誘拐したのか?何故、希和子はすぐに逮捕されなかったのか?希和子を匿っていた人たちはどういう事情があったのか?なるほど!と思うものばかり。種明かしをしているようで面白かった。

その第2部を読みながら、エンディングを予想する。妊娠した恵理那は自殺をするのか?とか、希和子と出会って一緒に暮らすようになるのか?希和子が憎い恵理那は、希和子を殺してしまうのか?でも結局、何もなく終わってしまった。

あのエンディングにすることで、作者は何が言いたかったのだろう?と考えるがよくわからない。蝉は地上に出てきてから7日目で死んでしまう。8日目まで生きた蝉は、見なくてもいい世界を見ないといけないから可哀そうだ、と恵理那は言った。しかし千草は、8日目まで生きた蝉が見たものは案外悪いものではないんじゃないか?という。

普通でない人生を歩んでしまった恵理那や千草、希和子。恵理那の両親や妹など、普通でない状況でしか見れない風景を見ながら生きてきた。世間からは白い目で見られ、嫌な思いしかない人生だったが、案外悪いものではない、ということか。

呼んでいる間は、これからどうなる、が楽しくて読み進めたが最後の最後で、なんか後味の悪いエンディングでちょっと消化不良、という感じ。

また解説に書かれていたことだけど、「この物語で出てくる男性は情けない人ばかり」という点も、ああ言われてみれば、という感じ。恵理那の父も恵理那の恋人も、不倫相手が妊娠しても無責任な態度しか見せない。殆どの登場人物が女性で、そういうところも僕には入り込めなかった理由だ。

読んでいる間はとても面白かったけど、最後がどうも消化不良で終わってしまいました。ちょっと残念。でも、この小説は映画化もされているらしく、Youtubeで予告編とかを見ていたら、結構面白そうだった。映画は機会があれば見てみたいな、と思う。

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